土遊野通信2023.8月号
2023/08/01
はじめに
酷暑。10年に一度の危険な暑さ。40度に迫る日々。土遊野の田んぼでも、てんたかくという早生品種がいつもより早く出穂し稲の花を咲かせました。通常、稲作は日照に大きく左右されるので、このように夏に晴れが多ければ豊作(冷夏なら不作)と期待をふくらませるのですが、今年は本当に暑すぎます。
田んぼの見た目ではなく、最終的に収穫し、籾摺りをして色彩選別し、良い品質のお米を出荷するので、今年は質がどうだろうと不安も正直もっています。
6月末の線状降水帯の影響で棚田が崩れる、イノシシやサルが田んぼに入る、棚田の条件不利に焦点を当てすぎると、心が打ちのめされてしまいます。それでも、棚田は夜にはしっかり気温が下がり涼しい!山の用水は冷たい!!水持ちの良い粘土質である!!!
この三拍子がここですごい力を発揮してくれると期待し、いよいよ収穫を迎えます。
土遊野循環記
有機米の栽培と平飼い養鶏を主軸に 循環型農業を行っていますが今年の通信では、この循環について詳しくお伝えしていきたいなと思っています。農業に興味がある方、いつかやってみたいと思う方にはどんどん参考にしてもらえたら、嬉しいです。
第7回「循環する時間」
前回は「ヤギさんと生きる。」というお話をしました。
今回は「循環する時間」について、お話したいと思います。
農業を始めて3年目くらいに、気がついたことがあります。
それは私達は"まぁるい時間の流れの中で生きている”ということでした。
春が来て種をまき、緑深まる夏、実りの秋、雪に覆われる冬があり、
そしてまた必ず春が訪れる。また、私達は種をまきます。
人間の人生とは、生まれて命遂げるまでの歳を重ねる。
いわば直線のような時間軸がイメージしやすいと思います。
私の農家としての人生は「木の年輪」のようなイメージです。
毎年同じことをやっているように見える農業かもしれませんが、
一年ずつ、経験を重ね少しずつ幹が太くなっていく。
一気に太くなれないところも、農業の特徴かもしれません。
私達は四季という季節とお天道様の恵みをいただき生きているので。
そして、その地に根付いてようやく経験になるという特徴もあります。
たくさんのノウハウがあっても、富山でのやり方が北海道や九州ですぐに通用するとは
限らない、もっと言えば、富山県内でさえ土質の違う別の田んぼでは同じノウハウが
通用するとは限らないくらいです。
どうして自分がここで農業をしたいのか。
どこで、誰と、どんな農業をしていきたいだろう。
この気持ちの支えはとても大きいです。
(2010年 初めての稲刈り)
この地に、根を張ると決めてよいだろうが、、、大学時代、富山に就農することをすごく迷いました。
就農したら動けなくなっちゃうんじゃないか。
山奥に籠もってしまって、世界が狭まってしまうのではないかと。
タイの農村やフランス、日本の農業現場にもいろいろ行き、本も読みました。
知識やノウハウを持っても、私はまだ農家ではありませんでした。
まだ「農業に興味のある人」でした。
富山の土遊野のある里山に、根を張ってみる、ここから始めてみよう!と決めて、ようやくここでの農業の1年目2年目3年目が始まり、私の経験値が蓄積され始めました。
毎年挑戦や反省の繰り返しで、それでも少しずつ幹が太くなり、その分枝を多く伸ばして、その先につける蕾が花開くことも増えてきました。
(2013年 稲架干し)
里山でまぁるい時間を過ごしていくと、同じ場所でも見えるものがだんだん増えてきます。
1年目はとにかく作業に追われ、体力限界で、管理している田畑しか見えていませんでした。
でも、2年目には道端の野草や竹林や、生き物たちにも目がいったりします。
飛んでいる虫、森の音、土の中のこと、、、どんどん見えてくるものが増えてきます。
自分がこの地で、里山と巡る時間の中で、どんな人生を送りたいのか。
ここには、一切の文字や言葉での情報がないので、感性や思考を研ぎ澄ます時間を過ごすことができます。
自分の心が、わくわくドキドキすることに向かって!
(2023年 青田まわり)
土遊野写真館
~お米と気温の繋がり~
イネは、田植えから出穂(しゅっすい:穂が出る)までと、出穂後から収穫時期の目安として、積算温度を用います。そのため、気温が高い今年はやはり出穂時期も早かったです。収穫時期も見極めなければなりません。それでも一本一本、とても丈夫に育ってくれています!収穫まであと少し!新米を楽しみにしていてください!
ひよっこ農家娘二代目奮闘記
~農業家への道⑦~
東京外国語大学東南アジア課程タイ語専攻、女子サッカー部所属、そしてアルバイト。
大学時代はこの3つに没頭していたと思います。
外国語大学を選んだのは、世界を知りたかった、いずれ世界を股にかける仕事がしてみたかったという
漠然とした思いもあったから。
女子サッカーは、中学高校をバレーボールをやってきたので、新しいことやってみたい!
次は足を使ってみようかなという結構単純な理由です。サッカーは今も時間を見つけて続けています♪
アルバイトは、パン屋さんと飲食店が多かったですね。
まかない目的もありましたが、今を思えば「食」の現場に興味があったからだと思います。
東京では「実家は富山の山奥で鶏を飼い有機農業をしています」という自己紹介をよくしていました。
その頃から富山の山奥?にわとり?有機農業?と結構話のネタになり、自分でも農家出身って珍しいのかと「気付き」をもらっていました。この東京でいただいたたくさんの気付きが、農業を初めて仕事として考えるきっかけになりました。
今月のおすすめ商品
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